お時間です

生き延びがち

「なるほど」を噛み殺せ

2018卒の私の社会人生活はたった3ヶ月だった。

彗星の如く現れ、社員旅行にだけしれっと参加して去って行った「会社の財布の穴」みたいな新人を演じてしまった理由は以前書いた記事を参照してください。

新卒で入った会社を3ヶ月で辞めた人の話 - キューブログ

その節はほんとうに申し訳なかったと思っています。

お互い相性が悪かったね…。

 

しかしこのウィンクのように過ぎた3ヶ月の在職期間においても、上司の方々は私にたくさんのことを教えてくださいました。

テプラの作り方、作業員のおじちゃんと上手く付き合う方法、ご当地銘菓、会社の派閥について、等々。

その中でも印象的、かつ私が改善に苦労したのは

「『なるほど』は上司や先輩に使う言葉じゃない」

という教えでした。

ソクラテスに習い、「無知の知」という姿勢をもって相手の話を吸い込もうと生きてきた私にとって「なるほど」は最小限の文字数で表現できる最大限の「あなたの意見は私の心と頭に刻まれましたよ。おめでとうございます」だったんです。

それが、不敬とな…?

まあ、あくまで"私にとって"は敬意の表現でも向こうがそう受け取らないのであれば無意味なのは確かですね。

郷に入っては郷に従う、長い物には巻かれる、尻尾は振れる本数振っておくことも得意な私は

「なるほどは失礼」

すらも「なるほど!」と受け入れて、以降は「なるほど」を封印することを上司に誓いました。

でも、これが難しかった。

私自身、今までどれだけ「なるほど」に助けられて来ていたのか、「なるほど」と距離を置くことがこんなに困難なのかと恐怖を覚えるほどでした。

なんせ、上司の方々はヒナのように何も知らない私に毎日毎日「なるほど」に値する智慧を授けて下さるんですよ。

もうこれは私の「なるほど」の封印を解かんとする裏組織の陰謀ではないかと勘ぐるほどに、次から次へと「なるほど」のトラップを仕掛けられ、何度も「なるほど」を解き放ち世界を闇で満たしてしまうところでした。

実例を挙げると、

 

上司「この商材はライバル会社との競り合いで勝って来た主力商品。だからアピールの仕方も他社比較が有効なんだよ」

私「なるほ〜〜〜〜〜ン!ほ〜〜〜んと凄いことですよね!」

 

上司「この地域は古くからの付き合いがあるから、交渉の仕方は俺のを盗め。効率的だし失敗しても俺のリカバリーが効く」

私「なるっ、なっ、納得しました!」

 

私「なァん!」

私「なるほど、と言いたくなります」

私「なる…なるようになるものですね」

 

こんな調子が「なるほど」の封印から1、2週間は続きました。

適応力の低さにダーウィンも墓の中で泣いてるよ。

でもどうにか「なるほど」の封印も板につき、

「そうなんですね」

「分かりました」

という愛想も何もないが怒られもしない神器を二つ手に入れた私は、スムーズに研修を進め、上司と仲を深め、居場所を獲得し、3ヶ月後には退職しました。

 

「なるほど」解禁〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!

家族と話してる時も、友人と駄弁ってる時も、ありとあらゆる「なるほど」ポイントで喉の奥から嬉しそうに「なるほど」が転がり出て来ます。

かわいい、かわいい私の「なるほど」よ。

今まで済まなかったね。

もう誰もお前を追いやったりはしないから。

お行き、思うがままに…。

なるほど「なるほど!」

 

 

そもそも「なるほど」ってなにゆえ失礼なんですか。

教えてくださった方には「なるほど」、もしくは「そうなんですね」を差し上げます。