お時間です

生き延びがち

『宝石の国』に感情をもらう人生初心者

宝石の国』って知ってる?

知ってる〜〜〜〜って人!

市民ホールの会議室借りるからAM10時からPM7時まで侃侃諤諤と話し合おう。

ちなみにこの二人の火星人が並んだ横にロボットが二体、みたいなSFめいたルックスの四字熟語の読み方は「かんかんがくがく」です。

「盛んに議論するさま」という意味です。

ギャグマンガ日和で学びました。

それはそうとして、会議室にはたぶんプロジェクターとかもあるだろうから「宝石の国と読者のメンタルヘルスの今後」について学会発表まで持って行こう。

そんで、なんやかんやでノーベル賞ももぎ取ろう。

ノーベルメンタル賞。

無いとは聞いたことがないので。

 

 

一方で知らな〜〜〜〜い、聞いたことだけある〜〜〜〜〜〜の人。

こちらです。

 

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[概要]

2012年から月間アフタヌーン(アフタヌーンKC)で連載中、既刊9巻(すぐ集められるね)、2017年冬にはアニメも全12話で放送された(すぐ見切れるね)、市川春子作の『宝石の国』。

擬人化された、美しく、強く、脆い宝石たちが月から彼らを攫いに来る謎の「月人」と戦うバトルアクション。

です。

青年誌として申し分のない激しいバトルとアクションが繰り広げられます。

 

[「死」のない宝石たち]

(前略)〜バトルとアクションが繰り広げられます。

ます、んですが、異質なのがその戦闘時に起きる宝石たちの、宝石であるが故の変化。

というか、人体(?)破壊描写。

何かと言うと、激しい攻撃を受けると文字通り「砕け散る」んですよね。

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モツも血飛沫も撒き散らさない代わりに、綺麗な姿形の宝石たちがバッラバラに砕けちゃう。

眼球が飛び出し、四肢は粉々、頭部はもげる。

初めてアニメでこのシーンを見た時なんか、びっくりした勢いでケツと地球の間に4cmぐらいの距離ができた。

ほんと跳ねた。

映画でよく見る「ブシャーーー!!!!グチャーーーーー!!!!!」の破壊描写にはない、大事なコップを落っことして粉々にしてしまったときのような、毛が逆立ち、胃がヒュンと冷たくなる感じに襲われるんですよ。

でも、さらに異質なのがこの「破壊」が宝石たちにとっての「死」ではないところ。

というか、彼らに「死」は訪れないんです。

砕けた破片をかき集め、組み合わせたらひとまずは元どおりになる、なってしまう。

ここがこの物語の魅力であり、一つ目の「おつらみ」ポイント。

概要で出てきた「月人」、宝石たちを襲う"悪者"に、彼らは幾人も既にさらわれていたり、劇中でさらわれて行ったりするんですが、残された者は持ち去られた彼らのことを絶対に、絶対に諦めないんです。

というか、諦められない。

「死」という終わりが与えられていないために。

「いつか取り返すことができるかも」

という、途方も無い"いつか"を永遠に(もちろん自分たちも死なないので)待ち続ける事しかできないんですよ。

彼らのこの「終わりがない」という性質は物語の根幹に深く関わっていて、展開が進むにつれてさらに重みを増してくるんです。

これが、本当に、苦しい…。

ジョルノ・ジョバーナ(ジョジョの奇妙な冒険第5部 黄金の風)も「終わりがないのが終わり…」と言っておりますが、

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こと『宝石の国』では逃れられない命題としてのしかかってきます。

 

[「勇気」が怖い]

勇気。

少年漫画では言わずもがな、実生活でも割とニーズが高まっているともっぱら噂のアレです。

この勇気が、この作品では"取扱注意"の劇薬だったりします。

「おつらみ」ポイント二つ目です。

主人公のフォスフォフィライトは宝石たちの中でも群を抜いて脆く、壊れやすく、戦闘に参加させてもらえません。

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自由闊達・天真爛漫・元気一杯のフォスフォフィライトは、その快活さで「戦いたい!」「役に立ちたい!」「何もしないのつまんない!」とどうにか戦いに参加しようと画策するんですね。

そのために必要だったのが、「勇気」。

最初は弱い自分を変えるための、勇気。

次に仲間を救うための、勇気。

そして、真実に辿り着くための、勇気。

彼がそんな様々な「勇気」を出す度に、彼自身に思いもよらない変化をもたらし、周囲をも巻き込んで歯車が回り出してしまう。

この、本来「出してなんぼっしょ!」な賞賛される他ないような「勇気」。

それが、主人公フォスフォフィライトから穏やかな日々を奪い、次々と後戻りの効かない孤独な道へと後押しし続けていくんです。

見てられない…。

勇気って何…。

出せば出しただけ世界がにっこりしてくれるんじゃないの…。

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[魅力いっぱい!抱えるモノもいっぱい!の宝石たちによる感情の万国博覧会

紹介した主人公フォスフォフィライト以外にも、たくさんの宝石たちが登場します。

その全てが子どものように無垢に、無邪気に見えながらも、数百、数千年の時間の中で培ってきた苦しみと、失った大切なものを両手いっぱいに抱えていらっしゃる。

「愛してるのに憎らしい」

「もう信じてはいないけど大好き」

「大事だからもう終わりにさせたい」

そんな、宝石たちの甘い毒のような感情がコミカルな会話の端々にするりと忍ばされているので本当に気をつけてください。

「危険!感情が出没します」

とかいう立て看板はないですので。

せいぜい20年とちょっとの人生経験しかない人生初心者、抱いたことのないような感情を宝石たちから急に教えられるたびに、消化できずに腹を下して涙腺がピーピーになってます。

 

 

以上、物語の核心に触れないように「『宝石の国』ヤバいよ」という悲鳴をあげてきました。

キャッキャッウフフ♡のやり取りの中にひっそりと息づく、美しい宝石たちの苦悩。

「死」や「生」、「人間」という深淵なるテーマへと迫っていく物語。

それらを見事に調和させ描き出すビジュアル。

本当に素晴らしい作品ですので、是非読んだり見たりして欲しいです。

そして一緒に悲鳴をあげましょう。

その悲鳴のアンサンブルを録音してCDに焼いてレコーディング会社に持ってってビルボードチャートで5位ぐらいを目指しましょう。

 

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